今回は超ひも理論(超弦理論)についてまとめていく。
超ひも理論は世界の物質が何からできているのか、を説明する理論である。
なぜクォークなどの素粒子では不足なのか、ひもだと考えると何がうれしいのか。
その前段として、まずは素粒子の標準模型から話を始めたい。
素粒子の標準模型
物質の構成要素となる粒子
物質は何からできているだろうか。
分子には原子があって、原子には原子核と電子があって、原子核は陽子と中性子からなって、、という構成までは一般に知られている。実際にはここからもう一段階、陽子や中性子は3つのクォークが結合して出来ていることがわかっている。\( u \)はアップクォーク 、\( d \)はダウンクォーク、と呼ばれる素粒子にそれぞれ対応させると、例えば陽子は\( uud \)、中性子は\( udd \)というように3つが結合したものになっている。
このように物質を細かく見ていくと、下表のように「クォーク」と「レプトン」に帰着する。
分類 | 粒子例 | 概要 | |
ハドロン (強粒子) | バリオン (重粒子) | 陽子、中性子など | 3つのクォークが結合して出来ているもの。 例)陽子:\( uud \) など |
メソン (中間子) | π中間子など | 2つのクォークが結合して出来ているもの。 安定ではない。 例)π中間子:\( u\bar{d} \) など | |
レプトン (軽粒子) | - | 電子、電子ニュートリノなど | レプトンそのもの。 |
自然界の4つの力を伝える粒子
粒子は、物質を構成するものだけではない。電磁力など、力は、粒子の交換によって発生している、と現在では考えられている。例えば電磁力では、荷電粒子間で光子を発生させたり吸収したりとやり取りすることによって力が働いている。この光子のような、力の伝達を行う粒子は「ゲージ粒子」と呼ばれている。
ゲージ粒子は、下表のとおりそれぞれの力ごとに存在する。
ゲージ粒子 | 荷量 | |
電磁力 | 光子 | 電荷 |
強い力 | グルーオン | カラー荷 |
弱い力 | ウィークボソン (Wボソン、Zボソン) | ウィーク荷 |
重力 | 重力子?(未発見) | 質量 |
強い力と弱い力については補足を加えたい。
強い力は、クォーク間に働く相互作用である。クォーク同士を結合して陽子や中性子を構成したり、さらに陽子や中性子を結合して原子核を構成したり、という働きをする。クォークは\( R,G,B \)のいずれかのカラー荷をもっており、\( u_R \)と\( d_G \)の間でグルーオンを交換して\( u_G \)と\( d_R \)になることで力が伝わる、というような現れ方をする。なお、バリオンが3つのクォークが結合して出来ていたことは、このカラー荷が関係している。実際に存在できるのはカラー荷を合わせた場合に”無色”になる場合のみであり、\( u_R u_G d_B \)のように3色が組み合わされることでバリオンになっている。また、反カラー荷なるものを使った”無色”となるもう一つのパターン、\( u_R\bar{d}_\bar{R} \)もある。これはメソンに対応している。
弱い力は、クォークやレプトンを別の種類のクォーク、レプトンに変化させる相互作用である。中性子のベータ崩壊などを引き起こす。クォークはウィークボソンというゲージ粒子を放出することで別のクォークに変化する。これは以下のような図で表現される。ウィークボソンは放出後に2つのレプトンに変化している。
この図を式で表現すると \( d = u + e^- + \bar{ν_e} \) となる。一方的な変化で相互作用らしく見えないが、ここで陽電子に置き換えると \( d + e^+ = u + \bar{ν_e} \) となり、それらしくなる。
標準模型
こうした内容を、重力を除いて、まとめられたのが標準模型である。
※ヒッグス粒子については今回は説明を割愛した。
※ちなみに下図の登場人物からなる標準模型のラグランジアンはこちら。
図に記載のあるように、クォークとレプトンはフェルミ粒子(フェルミオンともいう)、ゲージ粒子はボース粒子(ボソンともいう)、と2分されている。
フェルミ粒子とは、同じ量子状態は一つの粒子しか取れない、ざっくり言い換えると、場所を占有する粒子である。ゲージ粒子とは、いくつも重ねられる粒子である。これはそのまま、フェルミ粒子が物質の構成要素であること、ゲージ粒子が力の伝達に使える粒子であることに寄与している。
今回はここまで。次回は4つの力の統一に向けた試みから始める。
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